ここでは、家電リサイクル法で定められているエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機(=家電4品目)の構成をわかりやすく図解で説明しています。
テレビや冷蔵庫などの家電製品は、図1、図2に示すように、鉄、銅、アルミニウムなどの金属、プラスチック、ガラスなど、多くの材料で構成されています。
リサイクルの方法としては、材料として再利用する「マテリアル・リサイクル」が一般的です。また、「ケミカル・リサイクル」※や「サーマル・リサイクル」※という方法もあります。
※1-4をご参照下さい。
図1.液晶テレビの材料構成例
図2.冷蔵庫の材料構成例
リサイクルによる資源有効活用を促進するためには、次のような技術が必要になります。
家電リサイクルプラントではこれらの技術を用い、資源の有効活用とリサイクルプラントの運用コストの観点から、家電製品のリサイクルを行っています。
以下にそれぞれの技術についてご説明します。
図1.液晶テレビの材料構成例
図2.冷蔵庫の材料構成例
材料を種類ごとに分別するために、以下のような方法を取っています。
まず手作業でプラスチック部品などを取り外し、機械で残ったキャビネットや部品を破砕した後、磁力や比重の違いなどを利用して素材別に分別します。単一の素材でできている大型の部品は、機械で破砕して選別するより、手作業で分別する方が効率的にマテリアル・リサイクルができます。
材料として再生する際には、異なる種類の材料が混ざっていたり、不純物が混入していたりしないことが必要です。プラスチックのリサイクルの場合、例えばプラスチック部品に貼り付けられたシールや塗装が不純物となります。また、成型時に金属部品を埋め込み一体成型したプラスチック部品は、プラスチックから金属部品を除去することが必要です。高品質のプラスチックのマテリアル・リサイクルを推進するために、分別の前後で金属探知機に通し、再生用のプラスチックに金属が混入しないようにしている家電リサイクルプラントもあります。
手解体・分別の容易化のために、材料の種類が識別できるよう、部品への材質表示が進められています。家電製品ではプラスチック部品への材質表示を1991年から始め、プラスチック部品の分別に役立っています。
手解体での分別が難しいプラスチック部品は、破砕機で破砕した後に選別をします。このような場合には、材料を識別するための技術が必要になります。家電リサイクルプラントでは、比重差や近赤外線などを利用して材料を識別し選別するための装置も使用しています。
金属は溶融したり、精錬工程に戻したりすることで再生できます。プラスチックは種類ごとに分別され、洗浄、不純物の除去、ペレット化などの処理を経た後、組成を調整して新製品の材料として再生されます。不純物が入ると再生材料の品質が低下しますので、十分な材料の分別と洗浄が必要になります。
新製品の材料として再生が困難なプラスチックは、ケミカル・リサイクルやサーマル・リサイクルを行う場合もあります。
ケミカル・リサイクルとは、熱や圧力を加えて石油や化学材料に戻すリサイクル手法であり、高炉の還元剤として利用する、コークス炉で化学原料化する、などの方法があります。
サーマル・リサイクルとは、熱エネルギーを回収するリサイクル手法であり、燃料として効率的に利用するため、固形燃料化などが行われます。なお、ケミカル・リサイクルやサーマル・リサイクルは、家電リサイクル法では再商品化率の算定の対象になっていません。
エアコンや冷蔵庫、ヒートポンプ式の洗濯乾燥機では冷媒としてフロン類が使用されており、リサイクルの際にはフロン類の回収を行っています。また、冷蔵庫では断熱材にもフロン類が含まれており、リサイクルの際に大気中に放出しないように回収する技術が必要です。
資源有効活用をさらに促進することを目指し、リサイクル処理の効率を向上させるために、リサイクル技術の開発や、設計段階でのリサイクル性向上のための配慮が行われています。
家電メーカーはリサイクル技術の高度化に取り組んでいます。プラスチックのリサイクル技術については、純度や品位を向上させるための材料判別技術、ミックスプラスチックの選別技術のような技術を開発しています。また、分解作業の一部を自動化させる技術を家電リサイクルプラントと共同で開発し、作業の効率化を図っています。
製品設計段階においてリサイクル性向上に配慮すべき点は、再商品化率の向上とリサイクル処理効率の向上です。家電メーカーでは製品の環境配慮設計の取組の中でリサイクルへの配慮を行っており、製品アセスメントを実施し、従来機種と比較評価しながら継続的な改善・向上を推進しています。一般財団法人家電製品協会の「家電製品 製品アセスメントマニュアル第5版」では、「再生資源・再生部品の使用」「再資源化等の可能性の向上」「収集・運搬の容易化」「手解体・分別処理の容易化」「破砕・選別処理の容易化」という評価項目を設けています。
2001年4月から家電リサイクル法が施行され、家電メーカーに4品目(エアコン、ブラウン管式テレビ、冷蔵庫、洗濯機)のリサイクル処理が義務付けられました。また、2004年4月から冷凍庫、2009年4月から液晶・プラズマ式のテレビと 衣類乾燥機、2024年4月から有機EL式テレビが対象機器に追加されました。
家電リサイクルプラントでは、各社の多様な対象機種を効率良く処理するために、
最初に「①手作業による解体・分別」を行って主要部品を回収し、
次に「②機械による破砕・選別」で、残ったキャビネットなどを材料別に回収しています。
以下のリンクをクリックすると、4品目の一般的なリサイクルフローと処理の状況がご覧になれます。
また、以下をクリックすると、②機械による破砕・選別を行って回収した材料がご覧になれます。
リサイクルプラントに搬入された時の状態です。室外機と室内機がコンテナに積み込まれています。
冷媒回収機で冷媒フロン類を回収します。回収された冷媒フロン類は、専門処理施設で処理されます。
冷媒フロン類回収後、室外機から、基板やコンプレッサー、熱交換器などを手作業で取り外します。
取り外された熱交換器です。リサイクルされ、素材として再利用されます。
リサイクルプラントに搬入された時の状態です。ブラウン管が割れないよう、コンテナに積み込まれています。
最初に背面カバーを取り外し、次にブラウン管や基板などを手作業で取り外します。
取り外されたブラウン管です。ブラウン管は分割・破砕され、ガラスや鉛として再利用されます。
大型の液晶テレビは、専用作業台で効率的に解体されます。
液晶テレビから取り外された基板です。専用処理施設でリサイクル処理されます。
液晶テレビから取り外されたパネルです。プラスチックは破砕機に投入されます。
リサイクルプラントに搬入された時の状態です。コンテナに積み込まれています。
野菜ケースやドアパッキンなどのプラスチック部品を手作業で取り外します。
冷媒フロン類の種類を判別し、冷媒回収機で冷媒フロン類を回収します。
コンプレッサーを分離し、コンプレッサー内部の冷媒フロン類を回収します。回収された冷媒フロン類は、専門処理施設で処理されます。
フロン類回収後の本体を破砕機に投入します。
断熱材フロン類回収装置で断熱材フロン類を回収します。
リサイクルプラントに搬入された時の状態です。コンテナに積み込まれています。
モーターや基板を取り外します。
破砕機やリサイクルされる金属の錆防止のため、洗濯槽上部のリング部に入っている塩水を、切断機などを使って抜いておきます。
洗濯機からプラスチックやステンレスの洗濯槽を取り外します。
回収された鉄です。素材として再利用されます。
回収された銅です。素材として再利用されます。
回収されたプラスチックです。プラスチックは、素材の再利用のため、種類ごとに選別されます。
回収されたウレタンです。冷蔵庫の断熱材として使用されていたものをチップに圧縮したものです。断熱材の中に含まれるフロン類も回収されます。